【取材レポ】京都芸術大学が開学50周年に向けて新たな一歩!新使命「世界中の創造力を解放する。」、新愛称「KUA」、新ロゴを発表

坂本龍一氏の意志を受け継ぐ「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」構想も始動。大阪で記者発表会&スペシャルライブを開催
2027年に開学50周年を迎える京都芸術大学が、次の50年に向けた新たな挑戦をスタートさせました。


2026年9月2日(水)、グラングリーン大阪「VS.」にて「京都芸術大学 開学50周年記念プロジェクト記者発表会」を開催。会場では、新たな使命(ミッション)「世界中の創造力を解放する。」をはじめ、新愛称「KUA(クア)」、新ロゴを発表しました。
さらに、故・坂本龍一氏の創造の姿勢を次世代へ受け継ぐ新プロジェクト「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」の構想も明らかに。

発表会後には、原摩利彦氏、蓮沼執太氏、東北ユースオーケストラによる一日限りのスペシャルライブも行われ、京都芸術大学が描く「次の50年」の幕開けを感じさせる一日となりました。
Contents
開学50周年を前に掲げた新たな使命「世界中の創造力を解放する。」

発表会の冒頭には、京都芸術大学学長の佐藤卓氏が登壇しました。
2027年に迎える開学50周年を前に、創設以来受け継いできた「藝術立国」の理念を礎として、新たな使命「世界中の創造力を解放する。」を発表。
佐藤氏は、創造力について「一部の芸術家やデザイナーだけが持つ特別な才能ではない」とし、すべての人の中にあるものだと説明しました。
そして創造力とは、自然と人、人と人、異なる価値観を持つ人同士を「つなぐ」力でもあるとし、学びや実践を社会、さらには世界へ広げていく大学としての姿勢を示しました。
また、学生たちに日頃から伝えている言葉として、「本気で遊んでほしい。夢中になること、没頭することを恐れないでほしい」というメッセージも紹介。
芸術を学ぶことだけにとどまらず、一人ひとりが自分の好奇心や興味を追求し、思い切り創造することの大切さが語られました。
新愛称「KUA(クア)」と新ロゴを公開

続いて発表されたのが、新たな愛称「KUA(クア)」と新ロゴです。
「KUA」は「KYOTO UNIVERSITY OF THE ARTS」の略称であると同時に、瓜生山学園全体を表す「KYOTO URYUYAMA ACADEMY」の略称でもあります。
大学と、その母体である学園。これまで別々に語られてきた二つの存在を一つにつなぐアイデンティティとして「KUA」という言葉が位置づけられています。
また、世界中の学生や研究者、クリエイターが、専門や立場を越えて出会い、学び合うための「共通言語」としての役割も担います。新ロゴは、これまで使用されてきた「一滴」のシンボルマークと「KUA」の文字を組み合わせたデザイン。「一滴」のマークには、一人ひとりの違いと生命の多様性を象徴する意味が込められています。
さらに「KUA」の「U」の下に設けられた高台は、大学が一人ひとりの可能性を受け止める「器」でありたいという願いを表現しているそうです。ミッションの全文や、新たな行動指針「おもう」「いどむ」「あそぶ」「こえる」などについては、開学50周年特設サイトで公開されています。
坂本龍一氏の創造の姿勢を次世代へ。「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」始動

今回の発表の中でも、大きな注目を集めたのが「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」の構想です。
「A laboratory for experimentation across sound, art, technology, environment, and society.」を掲げ、音、アート、テクノロジー、環境、社会など、さまざまな領域を横断しながら実験を行う場を目指します。
発表には学校法人瓜生山学園理事長の徳山豊氏が登壇。
新たな使命「世界中の創造力を解放する。」について、創設者・徳山詳直氏が掲げた「藝術立国」の理念を現代に受け継ぎ直すものだと説明しました。
「創造力を解放する」とは、単に自分の好きなことを自由に表現するという意味ではありません。自分の思いを表現すると同時に、他者の思いにも耳を傾け、多様な価値観と出会いながら、自分自身の考えを更新し続けること。その実践を象徴するプロジェクトとして、坂本龍一氏を起点とした「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」が始動します。
拠点は京都芸術大学の「瓜生山荘」

プロジェクトプロデューサーの保持壮太郎氏からは、具体的な構想も紹介されました。

活動拠点となるのは、京都芸術大学のキャンパス内にある「瓜生山荘」です。ここをStudio、Archive、Libraryを備えた新たな創造の拠点へと整備します。坂本氏が遺した作品や資料、機材、楽器を保存するだけではなく、それらを実際の制作や研究、教育へとつなげ、専門家と学生が交流しながら新たな創造を生み出す「生きた場所」を目指します。
保持氏は、プロジェクトについて、坂本氏の功績だけを受け継ぐのではなく、既存の領域にとらわれず、異なる分野の人と対話し、学び、実験を重ね、問い続けるという「創造の姿勢そのもの」を次世代へ手渡していきたいと説明。
学園内外での共同制作やワークショップなどを起点に、さまざまな人や領域とつながりながら、世界へと活動を広げていく構想が示されました。
2027年春頃のスタジオ着工、2028年のスタジオ運用開始を予定しており、アーカイブやライブラリー機能も順次展開していく予定です。

建築は青木淳氏と品川雅俊氏が担当。リードアーティストには、坂本氏との共作経験を持つ音楽家・原摩利彦氏が参画します。
また、施設完成を待つのではなく、アーティストとの共同制作や学生とのワークショップなど、Labとしての活動も先行してスタートしていく予定です。
坂本龍一エステートからもコメント

会場では、「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」の設立に寄せた坂本龍一エステートからのコメントも紹介されました。
坂本氏と京都、そして京都芸術大学との関わりは長く、1999年に発表したオペラ《LIFE》の制作では、浅田彰氏やダムタイプの高谷史郎氏らと「京都会議」と称する集まりを重ねながら作品を制作。
その後も寺院での実験的なライブなど、京都の芸術家や研究者との協働を続けてきました。
京都芸術大学との交流も深く、京都芸術劇場 春秋座では2005年に高谷氏とライブを上演。2010年には「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」夏期特別講座の公開収録も行われています。
さらに「マラルメ・プロジェクト」では、京都芸術大学の関係者とともに、音楽、映像、美術、舞台芸術を横断した共創を実施。
こうした長年の関係を背景に、坂本氏の遺した機材や楽器を次世代の学びや創造に生かせないかという対話から、今回のLab構想が始まりました。
坂本氏が音楽だけではなく、美術、哲学、文学、科学、テクノロジー、環境、社会など、さまざまな分野に好奇心を持ち、学び、考え、実験し、実践し続けた人物だったことにも触れられました。
作品や資料、思想を保存するだけではなく、教育と研究の現場で次世代が読み直し、新たな表現へとつなげていく。「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」は、まさにそのための場所となることが期待されています。
「完成しない建築」と「使っていくアーカイブ」

発表会後半には、京都芸術大学副学長の小山薫堂氏をモデレーターに、建築家の青木淳氏、品川雅俊氏、音楽家の原摩利彦氏が登壇。「Sakamoto Ryuichi Lab at KUAを通じた『創造力の解放』」をテーマにトークセッションが行われました。
青木淳氏「建築とは、完成しないもの」
坂本氏が生前、京都・九条山に生活と創作の拠点をつくろうとしていた際にも関わっていた青木氏。坂本氏が京都に惹かれた理由について、巨大に膨れ上がった都市とは異なる京都の歴史の深さや「濃密さ」に惹かれていたのではないかと振り返りました。
今回のLabについても、単なる施設として完成させるのではなく、活動とともに変化していく場所であることが重要だと指摘。「建築とは、完成しないものだと思っています」と語り、活動が先にあり、建築がその展開に寄り添いながら並走する形が理想だと話しました。核となる部分を閉じるのではなく、外へ向かって開かれた建築を目指すという考えも示されました。
品川雅俊氏「使っていくアーカイブこそ、新しく面白い」
品川氏は、実際に瓜生山荘を訪れた際の印象を紹介しました。もともと住宅として建てられ、その後大学の会議の場としても使われてきた建物には、生活と公共の場という二面性があり、それが独特の緊張感を生み出しているといいます。「何かを考え続けたくなるような場所」と瓜生山荘を表現した品川氏。長い年月をかけて手が加えられてきた建物を、ただ保存するのではなく、これからも使われ、変化し続けるスタジオへと生まれ変わらせる考えを示しました。
また、アーカイブについても、「使っていくアーカイブこそ、新しく面白い」と語り、資料をただ保存して眺めるのではなく、若い世代が実際に触れ、自らの創造へとつなげていくことが重要だと話しました。
原摩利彦氏「教えるのではなく、一緒に考えたい」
坂本氏との共作経験を持ち、今回のプロジェクトでリードアーティストを務める原氏。自身が音楽家を志すきっかけとなった坂本氏のトリオツアーから、今年でちょうど30年になるという巡り合わせにも触れました。坂本氏が遺した機材や作品を学生とともに見つめながら、「教える」のではなく「一緒に考えていきたい」という思いを語った原氏。
さらに、アーティストが創作に没頭し、我を忘れる瞬間や、音楽が生まれる瞬間を学生に間近で見てもらいたいという思いも明かしました。
そしてLabについて、坂本氏が提唱していた「コモンズ」であるべきだと説明。誰かが囲い込む場所ではなく、多様なアーティストに開かれ、さまざまな人が集まり、創造が生まれる場所にしたいというビジョンを示しました。
坂本龍一氏の意志を受け継ぐ音楽家たちがスペシャルライブ

記者発表会の締めくくりには、「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」の始動を記念した一日限りのスペシャルライブも開催されました。
出演したのは、原摩利彦氏、蓮沼執太氏、東北ユースオーケストラ。
坂本氏の創造の精神を受け継ぐ音楽家たちによるパフォーマンスが披露されました。
この日の演奏曲は以下の通りです。
・「太陽と子どもたち(short ver.)」/原摩利彦・東北ユースオーケストラ
・「Aqua」/東北ユースオーケストラ
・「improvisation」/原摩利彦・蓮沼執太
・「Kizuna World」/原摩利彦・蓮沼執太・東北ユースオーケストラ
音楽家同士の即興的な掛け合いと、東北ユースオーケストラの演奏が会場を包み込み、記者発表会とはまた違った創造の空気が広がりました。「受け継ぐ」という言葉からイメージされるのは、過去をそのまま残すことかもしれません。
しかし今回発表された「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」が目指すのは、坂本龍一氏の作品や資料を保存するだけではなく、その創造の姿勢を未来の世代が受け取り、そこから新しいものを生み出していくこと。スペシャルライブもまた、坂本氏の音楽を「再現」するだけではなく、次の創造へとつなげていく一つの実践として印象に残るステージとなりました。
「次の50年」は、創造力を解放するところから
今回の記者発表会で発表された新たな使命「世界中の創造力を解放する。」。
そして、新愛称「KUA」、新ロゴ、「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」。これらに共通しているのは、芸術を一部の専門家だけのものにせず、一人ひとりが持つ創造力を起点に、人と人、異なる分野、そして社会をつないでいこうという姿勢です。
開学から50年。京都芸術大学は、これまで培ってきた「藝術立国」の理念を受け継ぎながら、次の50年へと歩みを進めます。「本気で遊ぶ」「夢中になる」「問い続ける」「異なるものと出会う」。そんな一人ひとりの創造の積み重ねが、やがて社会を、そして世界を変えていく。
京都芸術大学の新たな50年は、「創造力を解放する」という言葉とともに、大きな一歩を踏み出しました。
開催概要
名称: 京都芸術大学 開学50周年記念プロジェクト記者発表会
日時: 2026年9月2日(水)
会場: グラングリーン大阪「VS.」
主催: 学校法人瓜生山学園 京都芸術大学
主なプログラム:
・開学50周年に向けた新たな使命の発表
・新愛称「KUA」・新ロゴ発表
・「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」構想発表
・トークセッション
・SPECIAL PERFORMANCE
京都芸術大学(KUA)について
京都芸術大学は、通学課程と通信教育課程を併せ持ち、約24,000名が在籍する国内最大規模の総合芸術大学です。2027年に開学50周年を迎えます。通学課程では、芸術学部10学科24コースを展開。「社会と芸術」の関わりを重視し、企業や自治体と連携した「社会実装プロジェクト」を年間100件以上実施しています。
通信教育課程は5学科20コースを展開。1998年に開設された日本初の4年制芸術大学通信教育課程として、全国・海外から幅広い年代の学生が芸術を学んでいます。
所在地: 京都府京都市左京区北白川瓜生山町2-116

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