【内覧会レポ】光と影が描く“いのち”の物語、8年ぶりに大阪にて開催!「藤城清治101歳展 生きている喜びをともに」

みなさん、こんにちは。
影絵作家・藤城清治(ふじしろ せいじ)さん。その名前を聞くだけで、やさしい光に包まれた世界を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
101歳を迎えた今もなお現役で創作を続ける藤城さんの大規模展覧会「藤城清治101歳展 生きている喜びをともに」が、2025年10月22日(水)よりグランフロント大阪で開催されます。大阪での展覧会は、2017年の天保山での開催以来、実に8年ぶりです。
開催に先駆け、プレス内覧会に参加させていただきました。
Contents
“生きた線”と向き合う時間
1924年に東京都で生まれた藤城さんは、慶應義塾大学在学中に児童文化研究会を通じて人形劇と出会い、影絵の道へと進みました。
戦時中は海軍予備学生として過ごしながらも、人形劇を上演していた藤城さん。終戦後に影絵人形の存在を知り、「物のない時代でも表現ができる」と気づいたことが、創作の原点になりました。
藤城さんはこう語ります。
「鉛筆でもない、筆でもない、切る線の勢い。そのとき、その瞬間、浮かんだ思いでもって、切る線に命を懸ける。それが面白い」
1日に約100枚のカミソリを使って新たな作品を切り出すというその姿からは、まさに“生きる喜び”が伝わってきます。
1924年東京生まれ。学生時代から絵画、影絵、人形劇を始める。1948年『暮しの手帖』に影絵を連載し影絵作家として注目を集める。1952年人形と影絵の劇団・木馬座を結成、TV番組『木馬座アワー』では自ら演出、自身が産み出したオリジナルキャラクター・ケロヨンが爆発的人気を呼ぶ。木馬座解散後も影絵作家、影絵劇演出家として活動し世界各国で影絵展、影絵劇の上演を行う。2024年100歳を超えてからも新作を発表するなど、意欲的な創作活動を続けている。
展示の見どころ
入口を飾る大作「日本一大阪人パノラマ」
会場の入口でまず出迎えてくれるのは、横6メートル・縦3メートルの大作「日本一大阪人パノラマ」(2014年)です。
大阪の名所や人々のにぎわいがユーモアたっぷりに描かれ、光の演出によって街がまるで生きているかのように輝きます。8年ぶりの大阪開催を祝うにふさわしい作品です。
果てしなく広がるメルヘンの世界
藤城作品といえば、こびとや動物、そしておなじみのケロヨンなど、個性豊かなキャラクターたちが登場します。
今回の展覧会では「風の中の白いピアノ」を、水槽と鏡を使った特別な展示方法で紹介。
光が反射し合い、まるで果てしなく続く夢の世界を覗き込むような体験ができます。
物語を彩る影絵たち
藤城さんは20代から「暮しの手帖」に連載を持ち、その後「西遊記」や宮沢賢治の童話、太田光さん原作『マボロシの鳥』など、さまざまな物語の世界を影絵で表現してきました。
やさしさとユーモアに満ちたキャラクターたち、そして色彩豊かな光の表現が、物語に奥行きと温もりを与えています。
平和を祈る光
80歳を過ぎてからの藤城さんは、戦争や震災といった社会的なテーマにも積極的に取り組んでいます。
「九十九里浜旧香取海軍航空基地掩体壕のおもいで」や「平和の世界へ」には、戦争を生き抜いた者としての祈りと希望が込められています。
また、東日本大震災後に現地を訪れて描いた「福島 原発ススキの里」では、鮭の遡上を通して自然と人間の再生を重ね合わせ、未来への希望を静かに描き出しています。
いまを生きる、よろこびの線
100歳を迎えてもなお、創作の手を止めない藤城さん。
展覧会では、101歳の誕生日に公開された映像作品「藤城清治101 アビーと共に生きる」に加え、100歳以降に制作された最新作も複数展示されます。
今回のメインビジュアル「ミラクルアビーとミラクルボーイ」(2025年制作)も、そのひとつです。混沌とした時代に、明るい未来を信じる藤城さんのまなざしが感じられます。
自然と神話、そして四季へ
年齢を重ねるにつれ、藤城さんは自然や神話、そして日本の四季の美しさをテーマに作品を手がけるようになりました。
92歳で絵本化された『アッシジの聖フランシスコ』、93歳から『家庭画報』に連載された四季シリーズ全12点が、大阪では初めて一堂に展示されます。
光に包まれた風景のひとつひとつに、長い人生の旅路が刻まれているようです。
編集部後記
光の向こうに“いのち”が見える
「藤城清治101歳展 生きている喜びをともに」は、単なる回顧展ではありません。
そこにあるのは、戦争をくぐり抜け、影絵という表現で“希望”を切り出し続けてきた一人の芸術家の現在(いま)です。
101年の時を経てもなお、藤城清治さんの作品は私たちに語りかけます。
「生きていることは、それ自体がよろこびなのだ」のメッセージを光と影の中で感じることができます。
編集部オススメ!
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開催概要
展覧会名/藤城清治101歳展 生きている喜びをともに
会 期/2025年10月22日(水)~2026年1月4日(日)
休館日/12月31日(水)1月1日(木・祝)
開館時間/10時00分~17時00分(16時30分最終入場)
会 場/グランフロント大阪北館ナレッジキャピタルイベントラボ[〒530-0011 大阪市北区大深町3-1]
観覧料(税込)/大人2,000円(1,800円)、高大生1,500円(1,300円)、小中生700円(500円)
※未就学児は入場無料
※( )は20名以上の団体料金
※障がい者手帳等をお持ちの方(介助者1名を含む)は当日料金の半額(要証明)
展覧会公式サイト/ https://www.ktv.jp/event/fujishiroseiji-osaka

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