【内覧会レポ】「シュルレアリスム」は美術館を飛び出した!大阪中之島美術館「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」は2026年3月8日(日)まで開催!

みなさん、こんにちは。
「シュルレアリスム=不思議な絵画」というイメージは、本展を観ることで大きく更新されます。
2025年12月13日(土)〜2026年3月8日(日)まで大阪中之島美術館 4階展示室で開催の「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」は、シュルレアリスムを単なる美術史上の様式としてではなく、社会全体へと浸透していった思想と実践の運動として捉え直す展覧会です。
参加させていただいたプレス内覧会を通して強く感じたのは、本展が「シュルレアリスムとは何か」を説明する展覧会ではなく、「なぜ、どのように拡大したのか」を体感させる構成になっているという点でした。



Contents
視覚芸術から日常へ─6章構成で可視化される「拡張」
本展は全6章構成となっています。
前半ではオブジェ、絵画、写真といった視覚芸術を、後半では広告、ファッション、インテリアといった日常と密接に関わる分野を扱い、シュルレアリスムが領域を横断しながら拡大していく様相を丁寧に追っています。

第1章「オブジェ」では、私たちが疑うことなく現実だと認識している事象の中から、より上位の現実=「超現実」を露呈させようとしたシュルレアリスムの試みが提示されます。
オブジェを通して世界を見つめ直す体験は、本展全体の導入として非常に印象的です。

続く第2章「絵画」では、マックス・エルンスト、ルネ・マグリット、サルバドール・ダリら、シュルレアリスムを代表する画家たちの作品が並びます。
自動筆記(オートマティスム)に基づく奔放な表現から、極めて写実的でありながら現実を裏切るマグリットの作品まで、同じシュルレアリスムでありながら多様な表現が存在していたことが一目で分かります。

なかでも注目したいのは、横浜美術館所蔵のルネ・マグリット《王様の美術館》の来阪です。大阪中之島美術館所蔵の《レディ・メイドの花束》とともに、山高帽の男が展示室に並ぶ光景は、本展ならではの見どころと言えるでしょう。
写真、広告へ─「機能するシュルレアリスム」

第3章「写真」では、マン・レイをはじめとする作家たちが、写真というメディアを用いて現実認識を揺さぶる表現に挑んだ軌跡が紹介されます。
本来は現実を写すはずの写真が、デペイズマンなどの手法によって謎めいたイメージへと変容していく様子は、非常に刺激的です。

第4章「広告」では、シュルレアリスムが明確に「機能」し始めます。
人の視線を引きつけ、記憶に残し、欲望を喚起する。その訴求力の高さは、芸術と商業の境界を軽やかに越えていくシュルレアリスムの力を如実に示しています。
ファッションとインテリア─身体と空間を変える思想

第5章「ファッション」では、シュルレアリストたちと深く関わったデザイナー、エルザ・スキャパレッリの作品が大きな存在感を放っています。
ショッキング・ピンクのドレスをはじめ、香水瓶やジュエリーに至るまで、シュルレアリスムは「身にまとうもの」へと拡張していきました。マネキンを身体のオブジェとして捉える視点も印象的です。

第6章「インテリア」では、日常生活の場である室内空間そのものが揺さぶられます。
家具は有機的で奇妙なオブジェへと変貌し、安定した秩序は意図的に崩されていきます。シュルレアリスムが空間そのものに介入していったことが、体感的に理解できる章です。
「シュール」という言葉の先へ
内覧会で印象的だったのは、担当学芸員の方が語った「日本語化した“シュール”という言葉」と、本来のシュルレアリスムとの距離についての指摘でした。
本展はそのズレを説明するのではなく、実際の作品を通して静かに問い直す構成になっています。
シュルレアリスムは、単に幻想的で奇妙な表現を指す言葉ではありません。
世界の見方そのものを変えようとした運動であり、だからこそ美術の枠を越え、広告やファッション、インテリアへと拡張していったのだと実感させられます。
編集部後記
シュルレアリスムの発生から約100年を経た今、本展はその歴史を振り返るだけでなく、「なぜ今、あらためてシュルレアリスムを見る必要があるのか」を明確に提示しています。
視覚芸術にとどまらず、日常や社会へと広がったシュルレアリスム。
その拡大のプロセスを、これほど立体的に体験できる展覧会は貴重です。
また、大阪中之島美術館向かいのダイビル1階にある「パリアッシュ」とのコラボレーションによるシュルレアリスム・テーマのパンも販売されます。展覧会のみならず、こうした関連企画も含めて見どころ満載です。ぜひ、本展覧会と合わせてシュルレアリスムを心ゆくまでご堪能くださいませ。
鑑賞後はミュージアムショップもお見逃しなく!
開催概要
展覧会名
拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ
会期
2025年12月13日(土)〜2026年3月8日(日)
前期2025年12月13日(土)〜2026年1月25日(日)
後期2026年1月27日(火)〜2026年3月8日(日)
会場
大阪中之島美術館
住所
530-0005 大阪府大阪市北区中之島4丁目3-1
展示室
大阪中之島美術館 4階展示室
時間
10:00〜17:00(入場は16:30まで)
休館日
月曜日、12/30(火)、12/31(水)、1/1(木・祝)、1/13(火)、2/24(火)
*1/12(月・祝)、2/23(月・祝)は開館
観覧料
一般 1800円(団体 1600円)
高大生 1500円(団体 1300円)
小中生 500円(団体 300円)
大阪中之島美術館メンバーシップ会員の無料鑑賞/会員割引 対象
*税込価格。
*本展は日時指定制ではございません。
*団体料金は20名以上。団体鑑賞をご希望される場合は事前に大阪中之島美術館公式サイトからお申込みください。
*学校団体の場合はご来場の4週間前までに大阪中之島美術館公式サイト「学校団体見学のご案内」からお申込みください。
*障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)は当日料金の半額(要証明)。ご来館当日、2階のチケットカウンターにてご購入ください(事前予約不要)
*一般以外の料金でご利用される方は証明できるものを当日ご提示ください。
*本展は、大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要です。
*災害などにより臨時で休館となる場合があります。
TEL
大阪市総合コールセンター(なにわコール)06-4301-7285 受付時間:8:00〜21:00(年中無休)
URL
【大阪中之島美術館 公式サイト】
https://nakka-art.jp/
URL2
【大阪中之島美術館 公式サイト | 展覧会詳細ページ】
https://nakka-art.jp/exhibition-post/surrealism-2025/
SNS
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主催
大阪中之島美術館
特別協力
横浜美術館
企画協力
株式会社キュレイターズ
巡回情報 東京オペラシティアートギャラリー 会期:2026年4⽉16⽇(⽊)〜6⽉24⽇(⽔)(予定)

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